+Ave Maria

ある日本人の神父様から興味深いお話しを頂きました。
パリで本当にあった小さな出来事です。
毎日の黙想にも関連記事が掲載されたようですので、ご存知の方々も多いと思います
ここにご紹介したいと思います。
 
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ポールはほとんどの時間を屋外で過ごしていた。
彼はいつも聖ジャック大聖堂の入り口で物乞いをしていて、いつもワインを持ち歩いていた。
彼は多くの病気をもっており、肝硬変を患っていた。
顔色がそのことを示していた。近所の人々は遅かれ早かれ彼がいなくなるだろうと思っていた。
しかし本当のところ、誰も彼に関心をもっていなかった。
 
それでも教区の一人の心根の優しいN夫人は、彼とある種の対話を始めた。
この男の恐ろしい孤独は彼女を悲しませた。
彼女は、彼が朝になると一時的に大聖堂の入り口のいつもの場所を離れ、教会の中へ入って
行き、いつも誰もいない前列の座席に座り、聖櫃の前にいるのに気づいた。
彼はそこに座り、何もしていなかった。
 
ある日、彼女は彼に言った。
『ポール、私はあなたが何度も教会の中へ入って行くのを見たわ。
でも、そこに座っている間、何をしているの?
あなたはロザリオをもっていないし、祈祷書も持っていない。
ときには居眠りをしていることさえあるでしょう?
あそこで何をしているの?お祈りをするの?』

 
「どうしておれが祈りをすることなんかできるんだ?
おれは、子供のとき日曜学校で教わった祈りの言葉を一つも思い出せない。
すべて忘れてしまった。おれが何をしているかだって?
簡単なことさ!
おれはイエスが独りでおられる聖櫃のところへ行って、イエスにこう言うんだ。
『イエス!おれです、ポールです。あなたに会いに来ましたよ。』
そしてしばらくの間、そこに座っているのさ。」
 
N夫人は口をきくことすらできなかった。彼女はポールの言葉を決して忘れなかっ
た。
 
日々がいつものように来ては過ぎて行った。
そしてある日、起こるべきことが起こった。
ポールが大聖堂の入り口から消えた。
 
彼は病気なのだろうか?それとも死んだのか?
N夫人は探し出す決心をした。
そしてついに、ある病院にいることが分かった。
 
彼女はポールを訪ねた。かわいそうなポール。彼は恐ろしい姿になっていた。
彼は治療用のチューブで覆われていた。顔色は灰色で青ざめていた。
彼はまさに死んで行く者のようであった。
医師の診断も悲観的だった。
 

彼女は翌日、悪い知らせを聞くことを予想しながら再び病院に向かった。
 
ところがそうではなかった。ポールは奇麗にひげを剃り、生き生きとそた様子で、
すっかり変って、ベッドに身体をまっすぐにして座っていた。
計り知れない喜びの表情が彼の顔から放射していた。彼は輝いて見えた。
 
N夫人は自分の目をこすった。明らかに、それは彼であった!
 
「ポール!信じられないわ。あなたは復活したのよ!あなたはもはや同じ人ではないわ。
いったい全体あなたの上に何が起こったの?」
 
「そうだね、すべては今朝起こった。おれは気分が全くすぐれなかった。
突然、誰かが入って来てベッドの足もとに立つのを見た。
彼はハンザムだった。とてもハンサムだった・・・。
あなたには想像すらできないだろう。彼はおれにほほえみ、そしてこう言った。
 
『ポール!私だ、イエスだ。きみに会いに来たよ!』」
 
 
神に感謝!